北海道庁爆破・再審請求裁判(大森勝久)


第3次再審請求裁判

第3次再審請求の現況

北海道新聞

道庁爆破、札幌高裁も再審認めず 第3次請求棄却 202345

札幌地方・高等裁判所

札幌地方・高等裁判所

 2人が死亡、95人が重軽傷を負った1976年の道庁爆破事件で、殺人罪などで死刑が確定した大森勝久死刑囚(73)=札幌拘置支所在監=の第3次再審(裁判のやり直し)請求について、札幌高裁(成川洋司裁判長)が、再審開始を認めなかった札幌地裁決定を支持し、弁護側の即時抗告を棄却したことが5日、弁護団への取材で分かった。

 決定は3月30日付。
弁護側は今月4日、「結論ありきの決定で、著しく正義に反する」として最高裁に特別抗告した。

 決定理由で成川裁判長は、弁護側が提出した犯行声明文の「印」の筆跡が大森死刑囚とは異なるとする専門家の報告書について「声明文の性質上、見栄えを考え、意識的に記載した可能性がある」と指摘。「無罪を言い渡すべき明らかな証拠と言えず、札幌地裁決定の判断に誤りはない」と結論付けた。

 弁護側は2019年、3度目の再審請求を行い、筆跡のコンピューター解析に詳しい専門家の報告書を新証拠として提出。21年12月の札幌地裁決定は、報告書を「信用できない」として請求を棄却していた。大森死刑囚は逮捕以来、一貫して無実を主張している。(広田まさの)




 「道庁爆破事件」札幌地裁 死刑囚が求めた3度目の再審認めず NHKニュース  2021年12月17日

「道庁爆破事件」札幌地裁 死刑囚が求めた3度目の再審認めず

45年前、道庁で時限爆弾が爆発し、2人が死亡、95人が重軽傷を負ったいわゆる「北海道庁爆破事件」で、大森勝久死刑囚が求めた3度目の再審=裁判のやり直しについて、札幌地方裁判所は17日、再審を認めない決定をしました。

昭和51年3月、札幌市の北海道庁のロビーで時限爆弾が爆発し、2人が死亡、95人が重軽傷を負った事件では、平成6年に殺人などの罪で死刑が確定した大森勝久死刑囚(72)が無実を訴え、弁護団が3度目の再審=裁判のやり直しを求めていました。
この中で弁護団は、有罪の根拠となった犯行声明文の手書きの部分についてコンピューター解析による筆跡鑑定を行ったところ、大森死刑囚の筆跡とは一致せず、別人が書いた可能性が極めて高いと主張しました。
17日の決定で札幌地方裁判所の石田寿一裁判長は、「鑑定の手法は、筆跡に異常性があるかどうかの判断基準の客観性や、判断手法自体の合理性に疑問がある」などと指摘しました。
そのうえで「鑑定を信用することはできず、犯行声明文を別人が書いたものとは認められないため、無罪を言い渡すべき明らかな証拠にはあたらない」として、再審を認めない決定をしました。
弁護団は決定を不服として札幌高等裁判所に即時抗告することにしています。





再審可否 年内にも決定

2021年9月2日 北海道新聞




道庁爆破再審請求審 弁護側鑑定者「筆跡異なる」

2021年3月24日 北海道新聞電子版

 1976年に道庁で爆弾が爆発し、2人が死亡、95人が重軽傷を負った「道庁爆破事件」で死刑が確定した大森勝久死刑囚(71)の第3次再審(裁判のやり直し)請求で、札幌地裁(石田寿一裁判長)は23日、犯行声明文の筆跡を巡り、非公開の証人尋問を行った。弁護側の専門家が出廷し、大森死刑囚が書いた可能性はほぼないと述べた。

 審理後に弁護側が明らかにした。筆跡に詳しく、弁護側の依頼で鑑定書を作成した東海大の福江潔也(きよなり)教授が出廷した。

 審理では声明文に手書きされた「※」の印と大森死刑囚がノートなどに記した※印をコンピューターで比較した鑑定手法の信用性が焦点となっている。福江教授は、※印の字形や書きむらを分析した結果、声明文とノートの※印では特徴が大きく異なると証言した。

 検察側からは、鑑定の根拠の一つとされる他の筆跡サンプルを集めたデータベースが70人分なのは少ないとして、信用性を疑問視する質問があったという。

 確定判決は声明文の※印について、別の筆跡鑑定などから大森死刑囚が書いた可能性が高いと認定。殺人罪などに問われた大森死刑囚は無罪を訴えたが、94年に最高裁で死刑が確定。19年2月に3度目の再審請求をした。(角田悠馬)




筆跡鑑定者、地裁尋問へ 道庁爆破再審請求審 手法の信頼性焦点           2021217日  北海道新聞電子版

 1976年に道庁で爆弾が爆発し2人が死亡、95人が重軽傷を負った「道庁爆破事件」で死刑が確定した大森勝久死刑囚(71)の第3次再審(裁判のやり直し)請求で、札幌地裁(石田寿一裁判長)は16日までに、犯行声明文の筆跡が大森死刑囚のものとは異なると鑑定した専門家の証人尋問を行うと決めた。再審請求審は書面審理が中心で、尋問が行われるのは珍しい。

 尋問は3月23日に非公開で行い、筆跡のコンピューター解析に詳しく、弁護側の依頼で鑑定書を作成した東海大の福江潔也(きよなり)教授が出廷する。検察側が鑑定の信用性を争ったため、弁護側が地裁、札幌地検との三者協議で実施を求めていた。

 確定判決によると、声明文は事件発生の約4時間後、地下鉄大通駅のコインロッカーから発見された。用紙2枚にテープライターで打刻され、3カ所に「※」の印が手書きされていた。

 確定判決は、別の筆跡鑑定から「声明文の※印は大森死刑囚が手書きした蓋然(がいぜん)性が大きい」と認定した。再審請求審で弁護側は、福江教授の鑑定書を基に「97・6〜98・8%の確率で別人が書いた」と主張する。尋問では、筆跡をコンピューターで解析する福江教授の手法の信頼性が焦点となる。

 事件は76年3月に発生。殺人罪などに問われた大森死刑囚は無罪を訴えたが、94年に最高裁で死刑が確定。再審請求を2度退けられ、19年2月に3度目の請求を行った。(角田悠馬)

 



2019年2月8日に、第3次再審請求書を提出しました。


 これに対し札幌地検は、やっと意見書を札幌地裁に提出しました(2020年5月25日)。請求棄却を求める意見書です。


 以下は2020年5月30日の北海道新聞の記事です。

道庁爆破 新証拠「信用できず」 地検、再審請求棄却求める

2020年5月30日

 1976年に道庁で爆弾が爆発し2人が死亡、95人が重軽傷を負った「道庁爆破事件」で死刑が確定した大森勝久死刑囚(70)の第3次再審(裁判のやり直し)請求で、札幌地検が請求棄却を求める意見書を札幌地裁に提出したことが29日、分かった。弁護側が無罪主張の根拠とする犯行声明文の筆跡鑑定が「信用できない」と主張している。

 意見書は25日付。確定判決は筆跡鑑定などを基に、犯行声明文の「」印が「大森死刑囚が手書きした蓋然(がいぜん)性が大きい」と認定。弁護側は新証拠として、筆跡のコンピューター解析の専門家による鑑定書を提出し、「声明文の印は97・6〜98・8%の確率で別人が書いた」と訴えていた。

 一方、主任弁護人の浅野元広弁護士(札幌)によると、地検は意見書で、筆跡を画像として捉える弁護側の鑑定手法が「筆順や筆の運びなど、字形以外の要素を考慮していない」と問題視。「確立した科学的手法と言えない」などと批判している。

 事件は76年3月に発生。殺人罪などに問われた大森死刑囚は無罪を訴えたが、94年9月に最高裁で死刑が確定。2002年と13年に再審請求したが退けられ、昨年2月に3度目の請求を行った。(角田悠馬)


 「筆順や筆の運び」等については既に原審で争われており、今回はそうした古典的筆跡鑑定ではない、新たに確立された科学的方法による鑑定です。古典的筆跡鑑定では鑑定人の見方や情動等による影響もあり、まして今回の筆跡鑑定は文字ではなく記号「*」のみなので尚更です。
 つまり、鑑定できるのは+と×の組み合わせという極めて単純なものなのです。これを鑑定するのに、「筆順や筆の運び」などどれほど効果があると言えるでしょう。それに対して、このコンピュータによる筆跡鑑定は無数のデータをピックアップし数値解析するのです。例えば「+」という記号を細分化しデータ化するのです、そしてそれを数値処理することで大森君の書いた「*」印と犯行声明文に描かれていた「*」との異同を鑑定するのです。
 もし検察官がこの鑑定方法を批判するのであれば、しっかりした科学的見地から論理的に批判しなくてはなりません。
 いずれにしろ、裁判所がどう判断するか今後とも注意深く見守っていきたいと思います。
                                                                        2020年6月30日 軽部




以下は、再審請求書提出直後の北海道新聞の記事です(2019年2月14日付)

大森死刑囚が第3次再審請求 道庁爆破事件 札幌地裁に新証拠の筆跡鑑定              2019214日北海道新聞電子版

 2人が死亡、95人が重軽傷を負った1976年の道庁爆破事件で、殺人などの罪で死刑が確定した大森勝久死刑囚(69)=札幌拘置支所在監=が札幌地裁に第3次再審(裁判のやり直し)請求を行ったことが13日、弁護団への取材で分かった。確定判決が有罪の根拠の一つとした犯行声明文に書かれた3カ所の印について、コンピューター解析の結果、大森死刑囚の筆跡と一致せず、別人が書いた可能性が極めて高いとする専門家の鑑定書など7点を新証拠として提出した。

 請求は8日付。確定判決によると、犯行声明文は事件発生の約4時間後に地下鉄大通駅のコインロッカーから発見。用紙2枚にテープライターを使って打刻され、3カ所に手書きで「」の印が記入されていた

 確定判決は大森死刑囚が書籍やノートに記していたの印と比較した複数の筆跡鑑定を基に「声明文の印は大森死刑囚が手書きした蓋然(がいぜん)性が極めて大きい」と指摘。さらに《1》大森死刑囚の居室から爆薬成分が発見された《2》「道庁付近で似た人を見た」との目撃証言があったなど複数の間接証拠から有罪と認定した。

 再審請求書によると、弁護団は再審開始に必要な新証拠として、筆跡のコンピューター解析を専門とする東海大の福江潔也(きよなり)教授による印に関する鑑定書を提出。「97・6〜98・8%の確率で声明文の印は大森死刑囚とは別人が書いた」との結果が出たとし「無罪は明らか」と主張する。

 主任弁護人の浅野元広弁護士(札幌)は「声明文との結び付きは、確定判決が認定した状況証拠の大きな柱だった。結び付きが否定されたのだから判決の論理は崩壊する」と指摘する。

 大森死刑囚は94年9月に死刑判決が確定。これまでに再審を2度請求し、大森死刑囚の居室から爆薬成分を検出したとする道警の鑑定の信用性などを争ったが、いずれも退けられた。(松下文音、野口洸)

 <ことば>道庁爆破事件 1976年3月2日、札幌市中央区の道庁1階でバッグに仕掛けられた時限式消火器爆弾が爆発。道職員2人が死亡し、95人が重軽傷を負った。地下鉄大通駅のコインロッカーから「東アジア反日武装戦線」を名乗る犯行声明文が見つかり、道警は同年8月、大森勝久死刑囚を爆発物取締罰則違反容疑(所持)で逮捕、同9月に殺人容疑などで再逮捕した。大森死刑囚は公判で無罪を訴えたが、一審札幌地裁は83年3月、求刑通り死刑を言い渡し、94年9月に確定。大森死刑囚は2002年7月に再審請求したが、最高裁が11年12月に棄却。13年1月には第2次再審請求を行い、17年7月に退けられた。


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